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嬉遊笑覧
六上/音曲
盲女は、甘露寺職人歌合に、琵琶法師と女盲と番ひたり、其絵、髪おさげ眉作りたる盲女、赤き衣きて、上に白き衣打かけたるが、鼓打て歌うたふさまなり、絵の傍に、宇多天皇に十一代の後胤いとうが嫡子に、かはづの三郎とて詞書あり、曾我物語などうたへるにや、其歌及び判詞に、大鼓かしら打といふ事あれば、舞まひの類なるべし〈舞まひは此職人尽の内曲舞まひ白拍子と番ひてあり、ことに盲女は舞ふべくもあらず、但大がしらは鼓お打放なり、謡曲外百番、小林と雲曲あり、ごぜども八はたに詣て、内野合戦山名が臣下、小林の上野介がことおうたふ処、総じて、ごぜ達の謡には、女御、更衣、帝王の御事おも謡に作てうたふは習ひ雲々、これ職人尽の女盲と同じものと見ゆ、〉