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大鏡
四/右大臣師輔
たふのみねの少将(〇〇〇〇〇〇〇〇)〈○師輔子高光〉の出家し給へりしほどは、いかにあはれにも、やさしくも、さま〴〵なる事どもの侍りしかは、なかにもみかどの御消息つかはしたりしこそ、おぼろげならずは、御心もやみだれ給ひけんと、かたじけなくうけ給はりし、
みやこより雲のやへだつおく山のよかはの軒はすみよかるらん、御かへし、
こゝのへのうちのみつねはこひしくて雲のやへだつ山はすみうし、はじめはよかはにすませ給ひしぞかし、後には多武峯にすませ給ひき、いといみじく侍りしことぞかし、されどもそれは九条殿后宮などうせおはしましてのちの事也、