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四方のあか

遊女高尾朱椀記
此器や山谷わたりに名だゝる遊女、三浦屋のもと何がしとかや、最上氏に従良せし時、百の椀器おつくりて、したしきかぎりにわかちあたへしとなん、時うつり事さりて、原富の子香玉子の家蔵となり、美人の彤管にもかへざるべし、原富はむかしあし引の山の手に名だかき、三絃の妙手なり、
今も世に名のみ高尾の紅葉は朱椀朱おしき昔なりけり