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空穂物語
国譲上
かゝるほどに、そん王の君藤つぼにあるゆふ暮に、かははなれて、くろき水おけのおほきやかなる、よついつゝかさねて、女どもさしいれていぬ、つぼねの人々あやしき物かな、御ぜんにかゝる物お、さしいれていぬるとてみれば、おほきなるくぼてお、しろきくみしてゆひて、いつゝさしいれたり、とりいれたれば、ほどはおけのおほきさなり、あけてみれば、ひとつには、ねりたるきぬお、いいもりたるやうにいれたり、いまひとつには、あやおおなじやうにいれたり、いまひとつには、かつお、さけなどのやうにて、ぢんいりたり、くぼてのふた(○○○○○○)に、なま女のてにてけふならむ、からうして一つづゝのりつかひして、くまにはなどる、
ねぎごともきかずなりにしかさまには神のおほかるくぼてそでとぞ〈○下略〉