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懐硯

気色の森の倒び石塔
夫より台所へ出て見るに、いつもの鮑貝には乾飯の如くなりてあるおも、誰あつて心お付る者もなく、余りの事に膳棚にかゝり、匂ひお尋る処に、少き青皿(○○)に、飛魚半お喰ひ止(さし)て在しお、手にて徐と掻出すお、此女走り来り、夕飯に添へんと思ふて置たるものおと、〈○下略〉