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諸国落首咄

是は頓作内儀の手柄
都錦の小路山伏山の町の点者、用事有りて大峰のずしの点者方へ行れければ、亭主立出で様々の物語しける、折節夕飯時分になり、ごき(○○)や膳の音高く聞ゆれば、定めし夕飯がな振舞るゝよと心待して居けれども、中々熱き茶さへ飲さず、余り憎しと思ひて、内儀方へ一首贈らるゝ、
大峰のずしに始て来て見ればごきやぜんきの音ばかりなり
内儀おかしく思ひて、取敢ず返歌、
ごきぜんき其品々お聞からは山伏山の町の人かや