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今昔物語
十二
多武峯増賀聖人語第卅三
今昔、多武の峯に増賀上人と雲ふ人有けり、〈○中略〉増賀自ら黒く穢れたる折櫃お提げ持て、彼の僧供引く所に行て此れお受く、〈○中略〉増賀受け得て、房には不持行ずして、諸の夫共の行く道に、夫共と並び居て、木の枝(○○○)お折て箸として、我れも食ひ、傍の夫共にも令食れば、人々此れお見て、此れは隻には非ず、物に狂ふ也けりと、転がりて穢がりけり、