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今昔物語
二十六
観硯聖人在俗時値盗人語第十八
今昔、児共摩行し観硯聖人と雲者有き、其が若くして在俗也ける時、〈○中略〉関山の辺にして盗人に合ぬ、〈○中略〉観硯殺んずるに非ざりけり、此は何に為事ぞと思廻すに更に不心得、見ば庵の前に郎等共居並て、俎五六許並て、様々の魚鳥お造り極く経営す、此主人の男早く食物奉らせよと行へば、郎等共手毎に取て、目の上に捧つヽ持来お、主人寄て取居う、黒柿の机の清気なる二つお立たり、