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嬉遊笑覧
二下/器用
硯蓋は、元禄已後多く見えたれども、諸国咄〈貞京二年版巻二〉時代蒔絵の硯箱の蓋に、秋の野おうつせしが、此中に御所落雁煎榧さま〴〵の菓子つみてとあり、但しいまだ一種の器物に作りしにはあらず、俳徊三匹猿〈宝永元年支考撰〉末おとめたる竹のしら露〈季覧〉菊の香に菓子取ませて硯ぶた〈凉兎〉此頃よりのち、肴などおも盛るものとはなりしなるべし、