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貞丈雑記
七/膳部
一足付お足打とも雲、折敷に足お打付たる故也、足付の折敷といふ事お略して、足付足打などゝ雲也、
一折敷と雲は足なきお雲也、足付の事お折敷といふ事もあり、足付の折敷なる故、折敷とも雲なり、〈○中略〉
一かんなかけ、又かなかけとも雲は、へぎたる板にかんなおかけて、うつくしくけづりて作たる折敷おいふ、
一角(かく)の折敷とも、又角とばかりも雲は、四すみの角お切りたる折敷の事也、〈○図略〉一小角(こかく)と雲は、右の角の折敷お、三寸四方にしたる也、中角は五寸四方にしたる也、大角と雲は八寸四方也、是お八寸とも雲、
一平折敷と雲は、四角のかどお切らざる也、四角のまゝ也、足は無之、角の折敷のごとく足付る事も有べし、用に依べし、
一角切らずと雲は、平折敷の事也、東山殿年中行事に、管領江引渡〈角不切〉と雲事あり、所々に見たり、
一そば折敷と雲は、角切らずにて、足にはくりかたなきお雲、
一今時は年始などに、無位無官のいやしき者に至る迄、盃お三方にのする風俗になりたり、古は三方は平人の用る物にあらず、盃はかくの折敷、又はへぎにのせたる也、酌並記に、主人貴人の在所へ盃お持て可出様之事、角の折敷がへぎにすはりたりともとあり、是平人は三方お用ざる故、如此雲たる也、