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安斎随筆
前編十四
一折櫃 古書に見えたり、おりうづと雲也、檜の薄板お折り曲げて筥に作る也、是は餅類肴などお盛りふたおして、四隅に作り花などお立てゝ飾る也、俗に折と雲も同物也、然るに高橋家の伝也とて、形お絵図にして寸尺お書たるあり、田舎人の所為にて、余りにかたくなヽる事也、如此の雑物に、何の法式寸尺の定あるべきや、形は四角にも六角にも心任せにすべし、ふたもあり、台もあり、筥の身に合せて作るべし、筥に直に足お打付たるは略也、此折うづ一つお一合と雲也、折うづにかぎらず、すべて筥物の類おば、一合二合と雲、又折櫃の類お胡粉にてぬりみがき、綠青などおぬり、或は金銀の箔にてだみ、絵かき彩色などすれば穢らはし、古風にあらず、食類お盛る物なれば、白木にてこそ清浄なれ、且古風にてよし、