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古事記伝
十四
比良迦(ひらか)は〈○詳略〉書紀神武巻に、平瓫此雲毘羅介(ひらか)と見え、〈○中略〉さて此器は、今の皿(さら)又土器(かはらけ)の如くなる物と聞えたり、但儀式に比良加、径一尺三寸、深一尺四寸と見え、大嘗祭式に比良加一百口、各受一斗などゝもあれば、大なるも有なるべし、名義、比良(ひら)は、書紀に平瓫と書る如く深からず平(ひら)なる形おいふ、〈○註略〉迦(か)は此類の器の総名と聞えて、由加(ゆか)、〈○註略〉多志良加(たしらか)、〈式に見ゆ〉瓺(みか)などあり、又瓼土器(さらけかはらけ)などの気(け)も通音なれば、本卜一つ名なるべし、〈○中略〉太神宮儀式帳に、天の比良加十二口など見ゆ、〈今伊勢神宮に用る比良迦(ひらか)、俗に盆瓦(ぼんぐわ)と雲て、形は丸き盆の如く、径八寸許、深一寸許にて、尋常の土器の如き焼なる物にて、毎節宇爾郷より貢すとなり、今も心御柱のもとに安(お)くことゝぞ、〉