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諸国はなし

残るものとて金の鍋 仙人の段
一里ばかりも過ぎて、松原の蔭にて日和もあがれば、老人ひらりと下りて、草臥の程も思ひやられたり、せめては酒一つ盛るべし、これへと見え渡りて吸筒も無く、不思議ながら近う寄れば、吹出だす呼吸につれて、美麗き手樽一つ顕はれける、