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輪池拾葉

問曰、義経記、吉野法師、判官お追かけ奉る条雲、くりかた打たるこづゝみに、酒お入て持たりける、此こづゝみはいかなるものにや、未詳、
奉答、判官物語と題せし義経の異本には、くりかたうちたるこづゝにさけ入てと有、下文につつうちふりて申様、のみてはおほし、つゝはちいさしとみえたれば、筒なることうたがひなし、庭訓往来に、破籠小竹筒と有お、今はさヽえと訓たれども、この文によれば、こづヽとよむべきにや、既に異制庭訓には、瓶子五百具、筒三百とみえたり、さればつヽとよむが本名、さヽえとよむは異名なり、〈さヽは酒の義、えはいへのかへしならん歟、〉その故は今も陸奥国にて、竹筒に酒お入る〈江戸のとくりのごとし〉おさヽえといへり、〈○下略〉