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曾我物語

おなじくさかもりの事
たきぐちの三郎、〈○中略〉おひのばつざしきよりすゝみ出申けるは、たゞいまのさかづきもさる事にて候へども、あまりにもどかしくおぼへ候、大きなるさかづきおもつて、一づゝ御まはし候へかしと申ければ、たきぐちどのゝおほせこそおもしろけれとて、いとうの次郎かいといふかいおとり出し、此かい日本一二ばんのかいとて、いんへ参らせたりしお、くげにはかいお御もちひなき事なれば、ぶけにくださるゝ、太郎がいおばちゝぶにくださる、ひさげ五つぞ入ける、二郎がいおば三郎にくださる、しんすけ給はつて、どいの二郎にとらする、てんじやうおゆるされたるうつは物とて、ひざうしてもちけるお、おりふしかはづの三郎、どいがむこになりてきたりしお、ひきでものにしたりけり、うちはおのれなりに、そとはなしぢにまきて、いそなりにめおさしたり、ひさげ三ぞ入ける、〈○下略〉