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守貞漫稿
後集一/食類

盃も近年は漆盃お用ふこと希にて、磁器お専用とす、京坂も〓徳利は未だ専用せざれども、磁杯は専ら行はるヽ也、磁杯三都ともにちよくと雲、猪口也、三都とも式正塗杯、略には猪口、式正にも初塗杯、後猪口お用ふこと銚子に准ず、〈○中略〉
近製猪口〈○図略〉薄きこと紙の如く、口径二寸許、深さ八分ばかり也、大小あり、尾張にて専ら焼之、昔は陶器磁器とも、始め紋摸様等お描き彩り、後白玉粉と雲お掛て焼成る也、然るに文政比より、此猪口お白のまヽ白玉おかけ焼て、無文なるお太白と雲、是に江戸大坂等にて、藍及び諸彩金銀泥お以て、種々密画おかき、其彩品に白玉粉等お加へたる故に、再竈に焼て属之也、号てきんがきと雲、錦書なるべし、其美未曾有也、近年是お専用せしが、三五年来数彩は稍廃れ、藍或は金銀画行る、此他舶来の物おも用ふ、舶来の物等は、内外ごすの藍絵あり、再焼の物に非ず、