[p.0242]
類聚名物考
調度十四
小原酒盃 おはらさかづき
京都将軍の時出来し物となり、二寸四分の平盃なり、黒木の蒔絵有る故にさいふといへり、享保中にも幸阿弥何某に、仰付られて奉りし様有りといふ、北村季吟がいへるは、むかし小原の黒木売の女どもの、うたへる歌に、黒木めせ〳〵さゝおめせうすくもこくもきこしめせ〳〵、といへるによりて、この酒盃もおこれりといへり、さゝおめせは酒飲なり、 或人雲、東福門院様の御好にて、小原椀の形お以て御盃お仰せ付らる、黒木の蒔絵お、幸阿弥某まいらせしとかや、完永年中の事とぞ、その時誰人にや御側にてよみし歌とて、黒木めせめせ〳〵くろきさゝおめせこくも薄くもきこしめせ〳〵、