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古今吉原大全

吉原年中行事
八月十四日十五日十六日月見にて、〈○中略〉又なじみの客へ月見杯(○○○)おおくる故実なり、
吉原名産
月見杯は宝永の比、角山口の太夫香久山かたへ、京都島原の女郎瓜生野といへるが、客の縁によりて、文お遣しける時、銀にてきせるおこしらへ、火皿おつめておくりこしければ、かく山返事おつかはす節、大さかづきのいとぞこなく、ころ〳〵とせし杯おあつらへ、おきまとわするといふ心にて、しら菊と銘おつけ、京都へおくりけり、其比此ひやうばん高かりし、ころは八月十五日にてありしかば、其已後月見に客へ盃おおくる事になりぬ、是より前は女郎より月見のおくり物はなつめに引茶おいれておくりし事とぞ、