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西遊記
続編四
高麗の子孫
薩州鹿児島城下より七里西の方、のしろこといふ所は、一郷皆高麗人なり、〈○中略〉高麗焼の細工場並びに竈お見物す、仰山なる事どもなり、此村半分は皆焼物師なり、朝鮮より伝へ来りし法お以て焼故に、白焼などは実に高麗渡りの如くにて、殊に見事なり、〈○中略〉其外は下品にて、質厚く色も薄黒く、烈火にかけても破るゝことなし、故に下品は土瓶など多く造り出す、これは火敷売買して、薩隅日の三州は、大方民間にも此土瓶お用ゆ、猶大坂までもとり来りて、薩摩焼と称して重宝とす、薩摩にてはのしろこ焼のちよかといふ、ちよかとは茶家の心にて土瓶の事なり、薩摩の方言なり、土瓶といひては知るものなし、