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東雅
十一/器用
鍋かななべ 倭名抄に唐式お引て、鉄鍋はかなヽべといふと注し、又弁色立成お引て、堝はなべといふ、今按ずるに、金謂之鍋、瓦謂之堝、字或相通と注したり、なべとは古語に中(なか)お呼びてなといふ、日本紀釈に、中の字読みてなといふ是也、へとは間(ひ)也、隔(へ)也、其中に盛る所の物お隔つるおいふなり、凡なべといふもの、皆これに効ふべし、鍋よびてかななべといひしは、土お以て作れるものに分つ也、日本紀に甂の字、読みてなべといひしは、瓦なるものおいひし也、さらば此物の始は、土おもて作りしより起れるにぞあるべき、今の如きは、土おもて作れるものおば、土鍋といひて、鍋おばなべといふ事になりたり、