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〈浪花雑誌〉街乃噂

万松、先生大坂の鍋には皆なつるが無といひやすが、さやうでありやすかへ、鶴人、つるは肱りやせん、大坂では中から上の暮しでは、竈の数の五つ六つも有やすから、釜は釜、鍋は鍋と竈へ掛きりにして置て、煮物があれば空処へかけて煮やすから、別に鍋や釜おはづして、其処へ掛るには及やせん、それゆえつるは無とも、間に合といふ処よりして、昔からつるなしと見えやす、