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新編鎌倉志
三上
建長寺
円鑑 壱面、厨子に入〈れ〉西来庵にあり、開山〈○大覚禅師〉所持の鏡なり、高さ三寸五分、横三寸あり、鏡面に、観音半身の像、手に団扇〈お〉持、少し俯したる様に見ゆるなり、頭に天冠おいたヾく、首尾、如意の如に見ゆる物の端に、瓔礫お垂る、珠お連る糸はなし、下に巾の如くなる物お著す、眼裏には睛お不入、鏡後に、水中に三日月の影、逆に鋳付、其高さ半分ばかりあり、上に梅の枝お鋳付たり、是お提るやうに環お付けたり、鏡の形如鼎、是お円鑑と号する事は、開山在世の時より、自ら円鑑と額お書、今に昭堂に掛させ給お以てなり、其図如左、〈○図略〉
元亨釈書に、大覚禅師所持の鏡あり、没後其徒これお収む、或人夢みらく、其鏡禅師の儀貌お留むと、徒に告て乞見れば、倣仏として、観自在の像に似たり、諸徒伝へ看て異之、平帥〈平時宗〉これお聞て、請て府に入る、其暗曖お疑て、工に命じて磨治せしむ、初め幽隠なり、一磨お経て、大悲像、鮮明厳好なり、平帥悔謝して作礼す、後に寧一山記作るとあり、