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松屋叢話
平務廉は号お竹庵といふ、村田春海の門人にして、めでたき歌人なりけり、手かくわざもこよなうすぐれてぞありける、その家に新の王莽が鏡おもたりけるは、いとめづらかなる物なりや、その記にいへらく、径五寸五分、重百二十五銭、背作八乳、銘四字、曰長宜子孫、外輪作八乳、間列鳥獣形、流雲辺、素鼻、銘二十八字、其五不可識、按博古図載漢清明鑑、銘雲、漢有善銅出丹陽、和以銀錫、清且明、左竜右虎尚三光、朱爵玄武順陰陽、文略同、而此雲、新有善同出丹羊、則為新莽之鋳也明矣、莽之貨泉、儘有銅器難得、隷続独載新莽候鉦、今此鑑之存于我、亦可珍也、善同即善銅、周礼典銅作典同、丹羊即丹陽、漢妥民校尉熊君碑文、欧陽作欧羊、古字仮用、並可証也、と有にて知るべし、〈○下略〉