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栄花物語
八/初花
かくてりんじのまつりになりぬ、つかひにはとのゝ権中将〈○藤原道長子教通〉いで給、その日は、内の御ものいみなれば、とのもかんたちべも、まひ人の君たちもみなよひにこもり給て、うちわたりいまめかしげなるところ〴〵あり、とのゝうへ〈○道長妻倫子〉もおはしませば、御めのとの命ぶもおかしき御あそびに、めもつかでつかひのきみおひとへにまぼりたてまつり、かくてこのりんじのまつりの日、藤宰相〈○実成〉の御随身ありし筥のふたお、このきみの随身にさしとらせていにけり、ありしはこのふたにしろがねのかゞみ(○○○○○○○○)いれて、沈のくし、白がねのかうがいおいれて、つかひのきみのびんかき給べき具とおぼしくてしたり、このはこのうちに、でいにて蘆手おかきたるはありしかへしなるべし、
日かげぐさかゞやくほどやまがひけんますみのかゞみくもらぬものお