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大鏡
一/後一条
おほいぬまるおとこ、いできゝ給ふや、うたひとつつくりて侍りといふめれば、よつぎいとかんある事なりとて、うけ給はらんといふ、しげきいとやさしげにいひいづ、
あきらけきかゞみにあへば過にしもいまゆくすえのことも見えけり、といふめれば、よつぎいたくかむじて、あまたゝび誦して、うめきて返し、
すべらきのあともつぎ〳〵かくれなくあらたに見ゆるふるかゞみかも
今やうのあふひやつはながたのかゞみ(○○○○○○○○○○○○○)、らてんのはこにいれたるに、むかひたる心ちし給ふや、いでやそれはさきらめけど、くもりやすきところあるや、いかにいにしへのこだいのかゞみは、かねしろくて人手ふれねど、かくぞあかきなど、したりがほにわらふかほつき、えにかゝまほしく見ゆ、