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続狂言記

すみぬり女
申々ござれ、〈して〉何ごとじや、〈太〉こなたは誠になされぬに仍而、私が水と、すみと取かへて置ました、あの貌お見させられ、〈して〉誠にあれは女がいふ通じや、扠も〳〵だまされた、にくいことじや、何とせふぞ、思ひ出した、此鏡お、かたみじやといふてやつて、はぢおかゝせふ、〈太〉一段とよふござらふ、〈して〉なふ〳〵、国本へ下つたらば、追付迎おのぼさふけれど、それ迄のかたみじやと思ふて、此鏡お見てたもれ、わごりよに是おやるぞ、〈女〉扠も〳〵情ないことでござる、〈○中略〉やあ、是は何者が、此様に、すみおぬらしおつた、あゝ腹立や〳〵、こなたがしやつたか、腹立や〳〵、〈○下略〉