[p.0398]
我衣
明暦年中迄は大名の奥方ならでは鼈甲は不用、〈○中略〉元禄の比より世上活達になりて、鼈甲もはやあきて、蒔絵などかヽせ、鼈甲も上品おえらび、価の高下にかヽはるといへども、金二両お極品とす、享保頃より鼈甲の上品五両七両となる、依之常体の女求るに不及力、木の櫛に色々の蒔絵切金等おかヽせ、百匹、二百匹にて求む、それゆへ完保年中より、細工人に上手出来て、水牛(○○)の色よきに鼈甲の黒斑お入て、上鼈甲のまがひに売、是も始は廿目ほども致しける、櫛(○)笄ともに上手に似せたり、