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栄花物語
八/初花
五節、廿日〈○完弘五年十一月〉まいる、〈○中略〉御前に扇おほく候中に、蓬莱つくりたるお、はこのふたにひろげ、日かげおめぐりて、そのなかにらてんしたるくしどもお入て、しろひ物など、さべいさまにいれなして、おほやけざまにかほしらぬ人して、中納言の君の御つぼねより、左京の君のおまへにといはせて、さしおかせつれば、かれとりいれよなどいふは、かのわが女御どの〈○義子〉より給へるなりと思ふなりけり、またさおもはせんと、たばかりたる事なれば、案にははかられにけり、たき物おたてぶみにして、かみにかきたり、
おほかりしとよの宮人さしわけてしるき日かげおあはれとぞみし、彼つぼねにはいみじうはぢけり、宰相〈○実成〉もたゞなるよりは心ぐるしうおぼしけり、