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大和物語

昔、やまとのくにかづらきのこほりにすむおとこ有けり、〈○中略〉この女いとわろくなりにければ、男わづらひて、かぎりなく思ひながらめおまうけてけり、〈○中略〉かくて月日おほくへて、思ひやるやう、つれなきかほなれど、女の思ふ事いといみじぎ事なりけるお、かくいかぬおいかに思ふらんとおもひ出て、ありし女のがりいきたりけり、ひさしくいかざりければ、つゝましくてたてりけり、さてかいまめば、われにはよくてみえしかど、いとあやしきさまなるきぬおきて、おほぐしおつらぐしにさしかけており(○○○○○○○○○○○○○○○○○)、手つからいひもりおりけり、いといみじと思ひてきにけるまゝにいかず成にけり、