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歷世女装考

横櫛
今、市中にていやしき女、櫛お斜に挿お横櫛と唱(○○○○○○○○○○)て、よしある女中は仮にもせの事なり、よこぐしなるは、心ねもそれとしられていやしげなり、むかしもさる例あり、大和物語〈○註略〉風吹ばの歌の下に、女のがりいきたりけり、〈業平なり〉ひさしくいかざりければ、つゝましくてたてり、さてかいまめば、われにはよくてみえしか、いとあやしきさまのきぬきて、大ぐしおつらくしにさしかけており、てづからいひもりおりけり、いといみじとおもひてきにけるまゝいらずなりにけり、とあり、こゝにつらくしとあるは、横面櫛にて、乃横に大なる黄楊の櫛お刺て居たるにはあらぬか、〈○下略〉