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源氏物物十七/絵合
前斎宮の御参りのこと、中宮の御心にいれてもよほし聞え給、〈○中略〉院はいと口おしくおぼしめせど、人わろければ、御せうそこなどたえにたるお、その日に成て、えならぬ御よそひども御くしのはこ(○○○○○○)、うちみだりの箱、かうごの箱ども、よのつねならず、くさ〴〵の御たき物ども、くぬえかう、またなきさまに、百ぶのほかおおほくすぎにほふまで、心ことにとゝのへさせたまへり、おとゞみ給ひもせんにと、かねてよりやおぼしまうけけん、いとわざとがましかめり、殿もわたりたまへるほどにて、かくなんと女別当御らんぜさす、たゞ御くしのはこのかたつかたお見給に、つきせずこまかになまめきて、めづらしきさまなり、さしぐしのはこのこゝろばに、わかれぢにそへしおぐしおかごとにてはるけき中と神やいさめし、おとゞわれお御らんじつけて、覚しめぐらすに、いとかたじけなくいとおしくて、わが御こゝうならひのあやにくなる身おつみて、かのくだり給しほど、御心におもほしけんこと、かう年へてかへり給て、其御心ざしおもとげ給べき程に、かゝるたがひめのあるおいかにおぼすらん、御位おさり、物しづかにて世おうらめしとやおぼすらん、