[p.0417]
源平盛衰記
三十九
重衡酒宴附千寿伊王事
狩野介、湯殿尋常にこしらへて、御湯ひき給へと申す、中将〈○平重衡〉嬉き事かな、道の程疲て見苦かりつるに、身浄めん事の嬉しさよ、但今日は身お清め、明日はきられずるにやと心細くぞ思はれける、〈○中略〉晩程に、十四五計なる美女の、地白の帷に染付の裳著たりけるが、金物打たる楾に、新き櫛取具して、髪に水懸、洗梳なんどして上奉、