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甲子夜話
四十九
松平防州は、当時浪華の尹なれば、当地の邸には、婦女子の残り居るに、或夜この盗〈○鼠小僧〉入りたりと覚しき、三月と五月の両度なりしが、〈○中略〉一婦の部屋にては鼈甲の笄簪等お取出てなみよく双べ置き、銀簪等は、折曲げて置きたるのみにて一物も取らず、〈○下略〉