[p.0432]
嬉遊笑覧
一下/容儀
婦人首飾、昔は首飾なし、〈○中略〉賢女心化粧〈○其磧作〉に姑六十年以前の事お〈延享よりなれば貞享頃に当る、〉定規にして、むかしも今も同じやうに思はれ、嫁の髪みるに、〈○中略〉透とほる玳瑁の櫛おさして、笄の前にかんざしとやらいふ物おさゝるゝは、何の用にたつことぞ、時代ちがひ姑の目からは、弁慶が七つ道具お、あたまにいたゞくと思はるゝは無理でなし、凡そ首筋より上ばかりに入る物廿一二品もあり、かりそめに出るに戴身拵に隙なき事思はれける、〈○中略〉笄、かんざし、つと出し、〈○中略〉あらましさへ此通りぞかし、かく有は西鶴がいひし貞享より六十年に及べり、