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守貞漫稿
十一/女扮
文化文政中、巨戸の処女䙝服の図〈○図略〉
京坂は今に至りても、簪等数けお挿て、髪飾最も華也、蓋近年僅に不華、 江戸も文政以前は此図の如く両天釵、びら〳〵簪、前刺、背口刺、〈則後差はべつかう〉櫛等お挿し、紅丈長等お用ふ、如此飾今江戸更に廃て、処女と雖ども、櫛一、中刺簪一、〈婦の笄の所に用ふ〉前差簪一け、銀の頭掻簪〈ほそき小形〉お用ひ、其他お挿ず、今世京坂中民之処女礼晴之扮〈○中略〉
櫛と前差簪は鼈甲、うしろざしは銀釵、〈○中略〉又三都ともに、礼晴には、鼈甲簪櫛お用ひ、略䙝には、〈○中略〉簪は銀、鍮等お用ひて、鼈甲お用ふ声者希也、婦人も准之、〈○中略〉
今世〈嘉永中也〉京坂式正所用鼈甲製〈○図略〉
式正時、䙝ともに、櫛、笄、髷止、以上三具は各一個お用ひ、簪のみ応時て数お異にす、
式正には専ら前後左右各一け、凡て四個お用ひ、髪かきには、銀釵等一お加ふ、
䙝には、簪前後各一け、都て二個お用ふ、或は前のみ一けお用ふ、背には銀釵おさす、江戸は近世式正にも背に簪一けお用ふ、文政前には前にも挿之しが天保以来廃す、〈○中略〉
櫛以下四具ともに、極上製は白甲のみお以てし、中品は黒点ある物お交へ用ふ、蓋古製は全体黒点ある物お用ひしが、今は希にして、黒点お交るにも、〈○中略〉笄は、中央髪に挿てかくるヽ所のみ、簪も、下のみ曲止中央のみ皆専ら髪』入て不見所のみに黒点お交へ、極上製は全く白甲也、