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守貞漫稿
十二/女扮
今世江戸の奔簪、図〈○図略〉の如く短きお流布す、然と雖ども画図お見るに、甚だ長く画ける物多し、故に先日始て江戸に来る大坂の女客あり、其簪太だ長し、其故お問へば、江戸にて短き物お用ひず、必らず簪は長お流行と察て特製之所也と、余再問、何に拠て察て長きお流布とすと雲ば、江戸一枚摺と雲錦絵お見に、笄簪太だ長し、故に江戸風お倣て如此と、今当所に来て画図の非なるお知と雲り、今世の人すら東西此誤あり、況や後世の人、今の画お見て証とすること用捨あるべし、