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嬉遊笑覧
一下/容儀
鑷子、髭お作る事お好むころ、書院のたばこ盆に毛抜お添置たり、是お書院けぬきといふ、明暦二年の刻梓、世話焼草に、なむぼうか冷る書院の内ならん月にくさめおするはな毛抜、南方(○○)は毛抜の異名なり、漢土にても白髪お抜く、これお鑷白といふ、楊誠斎、鑷白詩、止酒愁無那、哦詩意已関、鑷髭非急務、也遣半時閑、〈○中略〉
ある通人と称する者、心に協へる鑷工あり、是お雇ひて額髪お抜しむ、鑷工家内に要事ありて帰らんことお請ふ、通人これお今しばしとめて金壱分お与ふ、やがてまた帰らんとすれば又金お与ふ、其内、家より小者お遣して呼しむ、通人又金お与ふ、二時に至らずして金子あまた費したりとぞ、