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諸家奥女中袖鏡
髪化粧の事
一垂髪とは、すべらかしさげ髪の事にて、髪の元お結ばず後へ下げ、長かもじお入るなり、一根結び下がみとは、元お人々の心のまゝに鬢お出し、根ゆひして、其元に長かもじ、又は中かもじお入て粧ふなり、〈○中略〉
一ふかそぎより振り分髪とて、肩より下までさげ置くなり、〈○中略〉但し此内、かもじもかけざるなり、〈○中略〉
長かもじの事
一長さ五尺計り、背の七のゆの通りにて髪お寄せ、かもじお入、水こき元結にて堅く結ふなり、扠その元お平元結にて二え廻しゆひ、其上に絵元結おかけるなり、
但し化しやうゆひは、とくるとも、下結ひは、とけざるやうに結ふべし、〈○中略〉
中かもじの事
一かもじお初より中お入べき事、結びやう、もと髪長き時は、袖の通りまでおろし、中お入れ、元結にて下二重廻し結びて、端おはねさせ、絵元結おかくるなり、
但し此は、とめ袖の時の事なり、〈○中略〉
隻下がみの事
一下げ髪とは総名なり、長かもじ、中かもじ、いづれもさげ髪なり、かもじ入ざるも下がみなり、
一根結下髪とて、近代長かもじ、中かもじにても、常のごとく髪おゆひ、其先にかもじお入るゝおいふなり、是は近代御規式相済、すべらかしにては、髪お結ふ手間取ゆへ、かやうの略式出来たり、好まざる事なり、殊には長かもじ入る時も、猶更あるまじき事なりといへり、
髪飾の事
一長かもじ 隻降げ髪 降揚げ 小形の形はづし
右は老女用ゆ
一長かもじ 隻降げ髪 降げ揚げ 小形のかたはづし 年の若きは、横富貴輪、
右若年寄女用ゆ
一長かもじ 隻降げ髪 降げ揚げ 横富貴輪右御中臈女用ゆ
一中かもじ 降げ揚げ 締太(しまだ) 双髲(からわ) 前蝉鬢(まへづと)
右御小性女用ゆ
一中かもじ 降げ揚げ 中形のかたはづし
右表使女、御側御次女用ゆ、〈○下略〉