[p.0474]
賤のおだ巻
一延享の比なりけり、〈翁(森山孝盛)が七つ八のころ〉女子のたぶさし(○○○○)といふもの初て流行出て、父なる人の二条の在番に居られけるが、便りの序に、姉なる人のもとへ、とゝのへて下し玉ひしお、母なる人おはじめ、召仕ふ女子どもまで、めづらしがりて、もてはやしたり、翁の子心にたしかに覚え居たり、猶鯨にてこしらへたるものなり、今はすたりて誰しりたる人もなし、