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歷世女装考

たぼさしの起立
今より四十年ばかり以前に、たぼさしといふ物いできて、市婦等おほかたは、是お用ひて重宝とし、追々軽便つくりかたのものありて、今もすたらず、はじめていできし時は、珍しと人々いひけるが、〈○中略〉賤のおだ巻〈写本〉おみれば、たぼさしは近古ありける物なり、おだまきに〈○中略〉図お出し、傍註に此物今すたれて、誰しりたる人もなしとありて、ちひさく図おいだしたるに、寸法おしるさず、ゆえに大、小弁じがたかりしに、一日或貴人よりおほせに、是は昔のたぼさしなるよし、時代の考証あらば記してよとありしが、おだ巻のづにたがはざれば、うつしとゞめし図左のごとし、延享年中たぼさしの図



総長さ六寸
此所はば五分
横の張り四寸
中は高く左右の張り上へ反る
此所にすこしそりあり髪の根もとへ緒つけしなるべし
按に、元文延享の頃、かもめたぼ(○○○○○)とて、えりのあたりまではり出す結やう流行たる事、物に見えたり、此たぼさし長さ六寸あるお以て、其たぼの長かりしお知るべし、