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歷世女装考

元結〈文七元結の名義はねもとゆひ〉
元結は髪ゆふに必用の物なれば、上古にもありつらんが、浅学には見あたらず、万葉集に、元結およみいれたる歌あまたあれど、糸なるも紙縷なるもあるべし、和名抄〈容飾具部〉に、鬠、和名毛度由比、以組束髪とあれば、糸なるが元結の本義なり、されども女の元結はむかしも飾と実用との二つあり、今も長かもじの絵元結は飾、常に用ふる文七元結は実用なり、飾なるは人の目につき、実用なるは人の目につかず、されば中昔の物語のるいに元ゆひとあるは、みな飾の元結なれば、今の文七元結の考証にはなしがたし〈○下略〉