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雨窻閑話
古代質素並小倉色紙の事完永の頃迄は、今の元結といふものなくて紙お細くたち、こよりにして髪おゆふ、其節までは、老人は紙お引きさきて、其儘にしごきて是にて髻お括り、其紙の先おもきらずとぞ、故に今古き絵草紙お見るに、其の如き髪つきのもの多し、古風なる事なり、若きものは、だてにとて、其しごきたる紙おわけめへはさみて置きなどしける、故に今も朝比奈などの画は、其遺風お移すと覚ゆるなり、