[p.0509]
嬉遊笑覧
一下/容儀
爪べに(○○○)とて、爪の先に紅おさせども、爪お染るがもとなり、勇灯新話、四時詩、要染纎纎紅指甲、金盆夜搗鳳仙花、注に女子採花塗指甲、則如著臙脂、この脂甲お染ること癸辛雑識集、そのほか諸書にみゆ、〈○中略〉大和本草に、鳳仙花(つまくれな井)、女児此花と酢漿草(かたばみ)の葉おもみ合せて爪おそむと記せり、筑紫あたりには、其如くする故に、つまくれないと名付るなり、女郎花物語に、ふかつめとりたる指の先、そりかへりたるやうなるに、べにいたくさしたるは、むくつけくさへこそ見え侍れ、女鏡、〈慶安三年刻〉爪のきりやう、ふか爪好み給ふべからず、べにいかにもうすくさし給ふべし、〈○中略〉懐子俳諧集九爪べにおさすは蝦手のもみぢかな、〈良春〉佐夜中山集、べに染の手お血の色にあやしまれ、とりぬる爪もふかきたしなみ、〈重明〉