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嬉遊笑覧
一下/容儀
五味子、髪お結ふに、びなんかづらとて、南五味子の茎お水に漬し、そのねばり汁お用ゆ、〈○中略〉色芝居草子に、髪はそほろの時より、丁子油、山吹ねり、さねかづらは干あがりて、から蚰蜓(なめくぢ)のはふだやうに、きら〳〵して見苦しきと紙漉のとろゝおつかはせ雲々、〈○中略〉かくいへりしも廃れて、今は久しく成ぬれど、近頃まで、油店の看板に、かづらの束ねたるお置たりしが、それもいつか皆うせて、唯両替町なる下村の店にのみ、もとの儘におしろいの看板の上にのせて有り、そのあるじに尋ねければ、今も希には、これお求めにくるもの有とぞ、