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歷世女装考

さねかづら
近世にいたりては、五味子(さねかづら)〈藤のやうに蔓のもの也〉おみぢかく切て、筒に水お入れて刺浸おけば粘汁出るお、今のぎん出しといふ油おつかふやうに用ひたるは、びん付油いできても、八十年前まではありける事、其比の書にあまた見へたり、此五味子お一名美軟石(びなんせき/○○○)ともいへり、〈○中略〉又びなんかづらともいへり、俳書二た車、〈正保三年板、雑舟撰、〉春風に岸の柳のあらひ髪、〈付〉びなんかづらは乳母が歳玉、〈○中略〉今の女中は、びん付の外に、すき油、ぎん出しの重宝あれば、五味葛の名は、百人一首に知るのみならん、享保十一年、不角撰、百入染、〈一名俳諧百人一首〉とて、百人一首の句おたらいれたる句集の中に、三条右臣お、花はいざ野郎帽子もさねかづら、是もさねかづらのはやりし一証とすべし、