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源氏物語
三十四/若菜
正月廿三日子の日なるに、左大将殿〈○髯黒〉の北方、わかなまいり給、かねてけしきももらし給はで、いといたく忍びておぼしまうけたりければ、にはかにてえいさめかへしきこえ給はず、しのびたれど、さばかりの御いきほひなれば、わたり給ふ儀式などいとひゝきこと也、みなみのおとゞの西のはなちいでに、おましよそふ、〈○中略〉御ぢしき四十まい、御しとね、けうそくなどすべてその御ぐども、いときよらにせさせ給へり、らてんのみづしふたようひに、御衣ばこよつすへて、夏冬の御さうそく、かうご、くすりのはこ、御すゞりゆするつき、かゝげのはこなどやうの物、うち〳〵きよらおつくし給へり、