[p.0557]
大鏡
二/左大臣時平
たゞこの君だち〈○時平公達〉の御中には、大納言源昇の卿御女のはらの顕忠おとゞのみぞ右大臣までなり給へる、その位にて六年おはせしかど、すこしおぼす所やありけん、出てありき給ふにも、家のうちにても大臣の作法おふるまひ給はず、〈○中略〉又はんざうたらひにて御手すまさず、寝殿のひんがしのまに、たなおして、こおけにちいさきひさげぐして、おかれたれば、仕丁つとめてごとにゆもてまいりていれければ、人してもかけさせ給はず、われ出させ給ひて、御手づからぞすましける、