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多志良加考
延喜式〈神今食大嘗祭〉雲、多志良加四口、
たしらか(○○○○)は、御手水お入る器なり、今のはんさうは、此遺製にて、名おかへたる物也、村井古巌所伝多志良加の図
はんさうの図
はんさうは字音なり、和名類聚抄〈澡浴具〉匜、説文雲、匜〈移爾反、一音移、和名波邇佐布、〉柄中有道、可以注水之器也、〈俗用楾字、所出未詳、但和名之義、或説雲、有柄半挿其内、故呼為半挿也、〉
弘賢按ずるに、延喜式〈神今食〉に匜おはさうとよみしは、和名抄以後につけしなるべし、匜と多志良加とならべ載たれば、おのづから別物なりし事あきらけし、匜は丈ひきく長き物にて、たしらかとはおなじからざれども、匜字の注釈、たしらかに似たる所あるより、はんさうとよびならはせしなるべし、〈○中略〉
たしらかの義詳なもず〈しいていはゞ、たとは手の義、しおはしらけの義にて、浄むる意にてもあるべき歟、かとにみか、ひらかなどいひし同じ義にて、磁器の名なるべし、〉
文化十二年正月 源弘賢