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今昔物語
十二
僧死後舌残在山誦法花語第卅一
今昔、阿倍の天皇〈○孝謙〉の御代に、紀伊の国牟婁の郡熊野の村に、永興禅師と雲僧有けり、〈○中略〉其の辺の人、禅師お貴ふが故に此の人お菩薩と雲ふ、〈○中略〉如此くして其の所に有る間、一の僧有て、此の菩薩の所に来る、何れの所より来れりと雲ふ事お不知ず、持てる所の物法花経一部、小字にして一巻写せり、白銅の水瓶(○○○○○)縄床一足也、〈○下略〉