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善庵随筆

笈雉随筆に、五山にて、毎日早天に方丈より祖師前へ供膳あり、先払暁に銅盤に湯お入れ、手巾お添て奉る、其後白粥お供ふ、未明に至り斎飯調菜およく煮、念お入て塩梅し、輪番の僧に供し奉る、四季に衣服おも奉る也、されば俗間に早朝に起て手水し口漱おうがいといふは卯粥なり、事は仏氏に出、るとて、琅鄒代酔編巻二十に、周朴唐末詩人、寓於閭中僧寺、仮丈室以居、不飲酒茹葷、塊然独処、諸僧晨粥卯食、朴亦携巾盂、厮諸僧中、畢飯而退、率以為常とあるお例証とす、鼎〈○朝川〉謂ふ、此説余り学問過ぎたる考なり、烏鬼お使ふもの鵜おして魚お捕らしめ、咽喉より下へ下さずして吐出せしむ、今手水するもの湯水に口お漱ぎ咽喉より下に下さずして吐出する、恰も鵜飼の如くなればとて、鵜飼(○○)といふ説の簡明朴実なるに如ず、